自分の汗が、じんわりと染み出してくるのが分かる。
日差しは、容赦なく俺の腕をこんがり焼き上げようとしているのだが、遮りたくても日影すらない。
それでも足だけは遅いながらも前へと進んでいたので、学校の最寄りのコンビニには、家を出てから20分くらいで着いた。
ここまでくれば、もう学校は500mほど行くだけだ。
俺はコンビニに入って、やっと本当に息をしている気分になった。
少しききすぎのクーラーが、上がりかけた体温を急激に下げていく。
アキも、なんだかんだ言っていたものの暑かったらしく、
「あー、ペット買おう!」
と、奥のほうにいってしまった。
俺は、チョコチップメロンパン(大)と紀州梅のおにぎりを手にとって、ペット売り場に足を向けた。
「う〜ん…『夏のウーロンつぶつぶオレンジ』と、『スパークリングギャバ茶』、どっちがいいかしら」
アキは、なんともステキな選択を決めかねていたので、
「………飲み切れるもんにしろよ?」
という、素晴らしく当たり前のアドバイスをした。
アキはしばらく悩んだ後、
「やっぱいつものにしよっと♪」
といい、『真夏限定・麦芽酵母入りダージリンアップル』などという、そもそも何故商品化したのかすらわからないようなブツを手に取った。
「げ」
と思わず感想が口をついてしまった。
「何よ、人の買うもんに文句あるわけ?」
ちょっとすね気味にアキがいう。
「いや、そーゆーわけでもないが…うん、いや、もういーよ、好きにしてください」
「あー、なんかその言い方やな感じぃ!」
そんなおちゃめな(笑)やりとりをしていたら、入口から俺を呼ぶデカい声が飛んできた。
「おっ、パンサーじゃん…あー?誰その子?もしかしてカノジョ?!」
「え、マジ?」
目をやれば、声の主は、俺と同じクラスの部活仲間&幼馴染みであった。
「なんだ、駆人に逸生か」
背は小さいが足が早く、パスを通すのがうまい、補欠仲間の中宮駆人(なかみやかけと)。
基本は天真爛漫をそのまま人間にしたような奴で、猫のようにくるくると表情・機嫌そのたが変わるのだが、そこが妙に人気があってモテたりしている。俺には理解できないが…。
「なんだなんて、つれないぞパンサー!せっかく暑さでやられてるかもしんないパンサーをレスキューしにきたのにっ」
…俺は行き倒れか?(笑)
「まーそれは冗談にしても、どうせマサヒロバテてるだろうから、お迎えしてあげようと思ってさ」
合いの手は、幼馴染みの向野逸生(むかいやいつき)。背は、俺と駆人の中くらいってとこか。黒ぶち眼鏡のお約束として、頭がいい。クラス委員もやっている。
ただ、性格はマジメ一辺倒ってわけではなくて、飄々としたところがあり、そこがまた一部に人気なんだとか。わからねぇもんだなぁ…オンナゴコロってやつは。
「よく言うよ、委員会の仕事抜け出す口実に使ったくせに…『僕の友達が財布忘れたみたいなんで、コンビニいってきていいですか?』だってさ…」
「逸生…俺は一体どこまでダシに使われなきゃならねーんだ…。前も確か俺は、リュックの底が破れて助けをよんだらしいな…」
後ろでアキが吹き出すのが聞こえた。俺のやられキャラっぷりを想像したようである。
駆人がアキに目をやる。
「ねーちょっと、その娘は結局ドナタなわけ?やっぱカノジョ〜??」
駆人は、男の割りにはデカい目をキラキラさせて、俺の返事…まぁこの場合、どんな返事を期待してるかは大体予想がつくが…返事を待っている。
「…はぁ?そんなんじゃねえよ。こいつは―…」
言い返そうとして、はたと困ってしまった。そうだ、こいつはイエデムスメだったんだ。
あんまり本当のこと言っちゃ、色々まずいことがありそうな…
というわけで。
「…い、いとこだよ」
と嘘を付いた。
「え〜、ホントにぃ?」
駆人はあんまり信用してないらしい。
逸生も、
「僕に嘘は付かないよね、幼馴染みのマサヒロくん?」
と、むしろ脅しをかけている。



←back|NOVEL TOP|next→


〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

もしよろしければ、ポチッとお願いします→拍手。


copyright © 2004 Fly,Cry,Forever. / acyapo all rights reserved.