「…あ、あ…ぁ」
たじろぎつつなんとか返した返事も、迫り来る駆人のキラキラ目と、確実に出ている逸生の黒いオーラに、語尾が飲み込まれてしまった。
俺は生来嘘をつくことが出来ない人間らしいので、おそらく96%バレている…。
だが、
「本当よ、ただのイトコ。マサヒロとは初めて会ったけど」
『え?』
思わず俺まで声をあげてしまった。
何の打ち合わせもないにもかかわらず、アキがかなりのナイスフォローを入れてくれたのだから、そりゃ驚いて当然と言うものだ。
あまりのタイミングの良さに、二人も
「え、マジで本当なの?」
「…マサヒロのいとこじゃ、なんの得にもならないよ?」
と、少々戸惑いの色が隠せない。
もちろん一番びっくりしたのは、嘘をついた本人である、俺だったが。
そんな俺たちのうろたえる様子を気にすることもなく、アキは
「ええ、本当vv和幸田アキっていうの、よろしくね☆」
と、お得意のにっこりスマイルで返してきた。
こうなると、もはや反撃の余地はない。
首をかしげたりして多少の疑惑を胸に抱きつつも、二人はとりあえず納得してくれたようだった。
…にしても、こいつ笑顔で何でも押し切る奴だな…実際押し切られてるんだから文句も言えないが。今度俺もやってみようかな…
などと考えてみたが、明らかに無理だし、別に発展性がないのでやめた。
そして、なんだか化かされた気分だった俺だが、本来の目的を思いだし、買物に戻ろうとした。スポーツドリンクを手にとって…
……あ。
「いつきぃ、そーいや、期末の数学、追試っていつだったっけ?」
と、振り向きざまに尋ねた。
すると、もうお得意のいや〜な笑顔が復活していて、
「マサヒロ、追々試の間違いだろう?」
と非常に適切な訂正を食らった。
「…言うな、逸生……」
悲しいかな、俺には数学の才能はないようで、追試も赤点だったのだ。
で、登校日に追々試というハメになったというわけ。
「俺は追試で受かったもんね〜☆マサヒロファイト!」
なんて、駆人は優越感丸だし。すっかりいつものテンションだ。っていうかお前もギリギリだったくせに…。
するとアキにも、
「なにマサヒロ、追試も落としたわけ?!」
と、鼻で笑われてしまった。くそうっ。出来る奴にはわかってもらえないんだ、このツラさはっ!!
「ちなみに試験はあさっての登校日だよ♪対策は、もちろん出来てるんだよね?」
「出来てねぇってゆーの分かって言ってやがんだろ、逸生…どうせ俺は数学出来ない理系だよっ」
ためいき混じりに返す。
「にしてもホドがあるわよねぇ、追々試なんて」
いと怪しげなるペットボトル片手のアキに反論しようとしたら、駆人が文字通り俺とアキの間に割り込んできた。
「だってマサヒロ、追試前日に、メールで試験範囲聞いてきたんだもん☆」
俺は、右手のペットボトルを、容赦なく駆人の右側頭部に衝突させた。
鈍い音に呻き声。
頭を抱えながら、駆人は涙目で抗議した。
「商品で思いっきり殴るなよ!!」
「いいじゃねーか、どうせお買い上げするんだから」
さらっと流して、俺はこの話題を終わらせようとしたのだが、駆人に代わって逸生が追い打ちをかけてきた。
「マサヒロはいっつも、直前にならないと準備しないんだよね。小学校から変わらないんだよ、締め切り前日に思い出すの。…朝顔とか」
「っ〜!古傷をえぐるなぁ!!」
「へぇ、何?『朝顔』って」
そう問うアキに、逸生は喜々として語り始めた。俺はもう止められないことを悟り、がっくりと肩を落とした。
確かに俺は、朝顔なんてとうに枯れ果てた8月31日に観察日記の存在に気づき、絶叫したことがある。しかし、そんな5年前の事を、初対面の奴にバラさないでくれ!!
「なんだよ、みんなして俺をいぢめやがって!いいよもう、レジ行ってやる!!」
と、わけのわからないいじけっぷりで、俺は皆の輪から抜けた。
代金を支払っている間も、三人が何か楽しげに話している。
まぁ、話題の想像はつく。
……俺だろう。
←back|NOVEL TOP|next→
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
もしよろしければ、ポチッとお願いします→
copyright © 2004 Fly,Cry,Forever. / acyapo all rights reserved.