見れば駆人は、身振り手振りを交えながら、何やら大きな声でアキに話しかけている。
 どうやら俺の失敗談の数々を、熱く語っているようだ。
 会計を済ませ、晴れて正式に自分のものとなったペットボトルで、再度駆人を小突く。
「っ!だからそれ痛いって!!」
またもぶぅぶぅいう駆人。
「声がデカいんだよ、声が。ったく、追々試じゃねーからって調子に乗りやがって」
そこにすかさずアキが、
「でも中宮クンは受かったんでしょ?追試で。少なくともマサヒロより頭いいじゃない」
 駆人の顔に広がる満面の笑顔。
 俺の顔に広がる満面の敗北感。
「あ、私も買ってこよ〜っと」
 そんなことお構いなしにレジに向かうアキだった。
 逸生はというと、今まで腕組みをしながら黙ってその光景を見ていたのだが、一言ポツリと、
「なかなかやるな、和幸田サン…」
と、珍しく心からの感嘆を漏らしたのだった。
 普段は冷徹なツッコミ役である逸生も御墨付きなのだから、俺が口で勝てるわけないな…、と今更理解した。

 そんなこんなで、俺たちはようやくコンビニを後にすることができた。
 しかし、外に出ればあの熱地獄。
 今まで体が冷えていた分、熱気が腕にまとわりついてくるのがよくわかる。
「うわっ、あつぅ」
 ほぼ条件反射並みの速さで、俺の口からはいつもどおりの愚痴がとびだした。
 アキと逸生は涼しい顔で、ほらはやく、と学校への道を歩く。奴等には、暑いという感覚がないのではないか、と思ってしまうほど、二人は暑さにこたえていない。
 俺のとなりには駆人が陣取って、いつの間にかちゃっかり買っていたアイスバーの袋を開けていた。
「何味?」
「グレープフルーツ♪」
「強奪」
言うと同時に、駆人の左手からアイスを奪い取り、口に運ぶ。
 う〜ん、サハヤカ。夏場は柑橘系が一番うまい。
「マサヒロ食うなよ!なくなる!」
 駆人は手をブンブンと振り回して奪還を試みるが、そこは身長差。ひじを上げてしまえばそんなにダメージはない。
「10cmの壁はデカいな、駆人」
そういい、一口かじったアイスを駆人に返してやる。
「くそうっ!俺は高校で20cm伸びる予定なんだっ!!」
 …確かに努力はしていると思う。毎日牛乳を1L飲み、毎日カルシウムたっぷりのお弁当を持ってくる。
 しかしこいつの成長期はまだらしく、イマイチ結果に結び付いていないのだ。
「じゃあ俺もあと10cm伸びる」
「…って、ずるい!俺の半分でいいんだろ!」
 プンスカ怒っている駆人は、本当に高2かよ…と思ってしまうほど幼かった。
 あどけない(…なんて言ったらかなり怒られそうだが)顔立ちや、身長がさほどないことが、さらにそれを引き立たせてしまっている。


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