心なしか、肌がピリピリする。
教室の空気が、うまく口では言えないんだけど…強いて言うなら『種類が変わった』みたいに、姿を変えた。
俺はこの、突然降って沸いた妙な感覚に、純粋に驚いた。
しかし――駆人のほうは、そんな様子は一向に見られない。なんか目が丸くなって、テニスの試合を見る観客みたいに、2か所を往復してるけど。
その視線を追うと…
「………??」
アキと蛍輝が見つめあっていた。
いや。
睨み合っていた、というほうが正しいかもしれない。
とにかく物凄く見つめあっていた。
俺も駆人と同じように、二人の顔を見比べてしまった。
…何でこんな見つめあってんだ???
俺の気持ちは、とうとう頭の中がごちゃごちゃになったらしい駆人によって代弁された。
「キミ誰?!ホント誰?!ってか何で見つめあってんの??知り合い??もう誰か説明してよぉっ!!」
日本語能力崩壊寸前の駆人の問いに、二人がハッとして視線を逸らす。
「そうだぜ、一体二人ともどうしたんだ?なんか教室の空気まで変な感じになってるぜ」
しばらく、なんとも微妙な気配が俺たちを包んだ。
蛍輝は相変わらず表情を崩さないが、しかしその顔は確かに焦っていた。
アキはというと、あからさまに動揺しており、視線があちこちに飛びながら、何事かを考えているようだった。
俺と駆人は、なす術もなく二人の反応を待つばかり。
蝉の声が白々しく響いた。
そんな状況を破ったのは蛍輝だった。
「え、ええと。俺は、2学期からここに転校してくることになった、氷凰蛍輝という。よろしく」
駆人、一つ目の謎解消。
アキは黙って、蛍輝の一挙一投足に目を配っている。
「うん、ヨロシク。…じゃあ、なんでアキちゃんと…」
「知り合いなんだ」
かぶせるように蛍輝が答えた。
「実は、昔同じ小学校に通っていたことがあって…」
「そうよ」
アキがナイスタイミングの相槌をうった。
さっきのコンビニでの嘘のように。
「同じ学校だったの。ちょっとやな思い出があって、それで…」
「睨み合ったってか?」
なんともうさん臭い話だ…という表情をあからさまに俺が尋ねると、二人はコクコクと頭を縦に振った。
駆人を見やると、どうやら情報処理が追いついていないらしく、しばらくフリーズしていたが、ピコーン!と結論を導き出した。
「そうかっ!…俺、逸生に報告してくるっ!!」
そう言うが早いが、教室を飛び出した。
「お、おい?!」
俺が廊下を見やったときには、もう追いつけない距離になっていた。
「ライバルが出たよ逸生ぃ〜〜!!!」
と、意味不明なことを叫びながら。
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