部活の自主練も終わり、長いはずの夏の日も大分傾いてきた。
帰り道の同じ部活仲間と、ワイワイ騒ぎながら歩く駆人。くるくると変わる表情。
だがしかし、いつもの十字路で手を振って友人と別れると、つとその表情を消した。
彼は、一人になるとあまり笑わない。どこか冷めたような目をしていた。他人と話すときの子供っぽさがないせいか、その顔は普段よりも、だいぶ大人びて見える。
そのまま、てくてくと家路についた。
向こうから、小さな女の子とその母親が、手をつないで歩いてきた。母親は買物袋を片手に、子供は、母親の手作りらしい、うさぎのアップリケのついた手提げを持って。
その微笑ましい光景に、彼は少しだけ和やかな気持ちになったが、すぐにそれはなくなってしまった。
彼が家に帰っても、どうせ『家族』は一人しかいないのだから。
夕暮れの、薄紫に茜が低く横たわる空からは、直視するには眩しすぎる、色のついた光が降り注ぐ。
そんな光の中では、人はむやみやたらと、自らの深層世界に入り込んでしまうものだ。
彼には両親がいなかった。彼が幼いときに、交通事故で亡くなったのだと、兄弟のない彼には、もはや唯一の肉親である祖母が語ってくれた。
ドラマや小説ならよくある話だ。そういう子は、たいていが実は『努力家』で、その苦労が報われて『成功』し、素敵な恋人などまで手にいれて『幸せ』になるのだ。
――そんなうまくいくわけないじゃん。
彼は、足下で夕日に染められていた小さな石ころを、何気なく蹴飛ばした。
石はコロコロと転がったが、思ったよりも遠くには行かず、すぐに止まってしまった。
彼はそれを追いかけて、もう一度蹴った。
つま先は小石に当たらず、足は宙空を裂いた。
「何やってんだろ…」
そっと足を下ろして、彼は溜め息と共に、そうつぶやいた。
しかしもう、道には誰も出歩いてなどいなかったので、その言葉は、どこかの家から漏れてきた、団欒の切れ端に押し潰されてしまった。
――ばあちゃんが心配する。こんなことしてないで、早く帰ろう。
彼は日頃から、これ以上祖母に迷惑はかけられないと思っていた。
ほとんどの家事をこなしてくれるし、毎朝栄養バランスも考えた弁当まで。
朝練で早い日も、寒くて氷が張るような日も、祖母は欠かさずに弁当を持たせてくれる。生きがいになっているのかもしれない。
彼は、時にはおかずのレパートリーに洋食が少ないことを不満にも思ったが、祖母の弁当は嫌いではなかった。
昔こそ、母親の弁当が欲しいとも思ったが、今ではもう、そんな幼い夢は浮かばなかった。
そんなものは、とっくに宵の一番星に溶かしてしまった。
彼はそうやって、現実を受け入れる術を身に付けてきた。この人生を、その運命を受け入れる術を。
その代わりに、こんな昼と夜の境目に紛れ込んだ、幼い頃のビー玉のような願いがつまった一番星を見上げて、一つだけ溜め息を吐くのだったけれど。
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ちなみに管理人の家庭はいたって普通の、小さな幸せのある家庭です。
もし両親がいなかったら…と想像してみましたが、リアルな想像は私には無理でした。
家族ってホントに大事だと思います。
なんか暗いね…。。。
でもたぶん、この次のアップ分も明るくはない(汗)
UPDATE 2005.12.9
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